この記事は、2026年4月15日〜5月17日に開催された『ヌル・アーデン展』の記録です。

体験する美術館について
「体験する美術館」は、荒巻まりの氏と、株式会社ex Labsに所属するプロデューサーによって展開されている、“体験”を提供するレーベルです。
芸術をはじめとした、マネタイズが難しいコンテンツを体験型エンターテインメントと掛け合わせることで、優れたクリエイターの皆様に新たな機会や表現の場を生み出すことを目的としております。
公演終了後には、公演内で使用された絵画などのオークションを行うことで、販促の機会も用意しております。 (もちろん、ただのオークションではございません)
2026年1月中頃より本企画の構想を開始し、第1回公演として『ヌル・アーデン展』を開催いたしました。
初公演ということもあり、オペレーション面や公演内容を含め、至らぬ点もあったかと存じます。 今後も「体験する美術館」は、様々なアーティストの皆様と提携し、美術館や各種会場を舞台とした新たなコンテンツを展開してまいります。
長い目でご一緒いただけますと幸いです。 何卒よろしくお願いいたします。 本記事では、再演予定のない『ヌル・アーデン展』の記録を掲載しております。
なお、実際にご体験いただいた皆様の特別感を大切にするため、一部内容を割愛しております。あらかじめご了承ください。
取材・ご依頼につきましては、以下までご連絡ください。
【お問い合わせ先】 info@kabuexlabs.com
体験概要
⚠️演者との交流・セリフの大半は割愛しております。
参加者の皆様は、“ヌル・アーデン”という正体不明の画家による個展に興味を惹かれ、小川町にある怪しげな建物を訪れることとなります。
開催時刻になると、中から『森屋(もりや)』と名乗る人物が現れ、静かに扉を開きます。

建物の中へ案内されると、まず1枚の絵画について問いかけられます。
「この絵画について、どう思われますか?」

そこに描かれているのは、ザクロと人間。 参加者は、それぞれが感じたことを口にしていきます。
森屋は、その返答に対して、納得したようにも、していないようにも見える曖昧な反応を繰り返します。
さて、1階の鑑賞を始めようとしたその瞬間――突如として停電が発生します。
森屋 「おや、停電のようですね。 ……2階から鑑賞を始めましょう」
どうやら、この建物は2階建てになっているようです。
不運にも停電が発生してしまったのか。 あるいは、それすらも予定された出来事なのか。
あなたたちは、森屋に誘導されるまま2階へと向かいます。
2階には、数多くの絵画が展示されていました。

まずは自由鑑賞の時間とのことで、参加者たちはそれぞれ絵画を見て回ることになります。
しかし、鑑賞を続けるうちに、ある奇妙な違和感に気づきます。
展示されている絵画のタイトルには、 『日本語』で記載されているものと、 『特殊な言語』で記載されているものの、 2種類が存在していたのです。
その理由を考えている最中も、森屋は様々な話を語り続けます。
・芸術の価値について。
・ヌル・アーデンという存在について。
どこか要領を得ない話ではありますが、 森屋自身、何か強い想いを抱えているようにも見えます。
森屋 「皆様がお越しくださいましたのは、 “名以外を持たぬ画家”――ヌル・アーデンの展示です。 どうぞ、お楽しみください」
そう告げると同時に、森屋は指を鳴らします。
その瞬間、会場内で映像が再生され始めました。 (動画はこちらからご確認いただけます) https://canva.link/m7g6q7sh0eqv02m
さらに会場を探索していくと、 緑色の封筒と、大量の資料が発見されます。

資料や映像の内容を整理すると、次の事実が判明します。
・あなたたちへ語りかけている存在は、『境界修復機関』という組織の人間であること
・ヌル・アーデンは、“絵画の中へ人を閉じ込める怪異”へと変貌してしまったこと
・この空間から脱出できなければ、あなたたちも絵画へ取り込まれてしまうこと
・制限時間を超過すると、完全に絵の中へ閉じ込められてしまうこと
・そして、森屋は敵側の存在であること
突然突きつけられる大量の情報。
混乱しながらも、あなたたちは脱出を目指して行動を開始することになります。
しかし、ここで大きな問題が発生します。
先ほどから展示されていた、あの正体不明の言語。 どうやらそれは、『未定義言語』と呼ばれるものらしいのです。

そして、脱出に必要な情報の一部が、その未定義言語によって記述されていました。
つまり、あなたたちは―― 『未定義言語』が、日本語でどのような意味を持つのか。 それを解読し、脱出方法を突き止めなければならないのです。
『境界修復機関』のロゴがあるものは、森屋からは目視されないようなので、ある程度自由に行動はできそうです。
そして、会場内には『芸術品名特定シート』という資料が存在していました。


ライトの在処を見つけなくてはならないようです

こうして、絵画タイトルと未定義言語の対応関係を少しずつ読み解けるようになるようです。
例えば、ある絵画のタイトルが『青の裏側』であった場合。 未定義言語は、“1文字=1単語”として構成されているようであり、
『青』 『の』 『裏側』
というように単語単位で分解し、 未定義言語と照らし合わせていくことで、 その文字が持つ意味を推測できるようになっていくのです。

そうして探索を続ける中、 “ライトの場所”を示す情報へ辿り着きます。
実際に向かってみると、 そこには確かにライトが置かれていました。

ライトを発見した瞬間、壁面にミッションが浮かび上がってきます。

どこか不穏な指示。
恐る恐る、あなたたちは再び1階へ向かうことになります。
すると――
先ほど感想を述べていた絵画が、大きく割れていたのです。


それだけではありません。
絵の中に描かれていた“人間”が、消えていました。
『絵画の中から、人間が現実へ出てきた』 そう推測するしかない状況の中、 あなたたちは指示に従い、さらに奥へと進みます。
1階へ辿り着くと、 そこには一人の人間が倒れていました。

リボンを外してみると、 その人物は『境界修復機関』に所属する『前田』という人物であることが判明します。
どうやら彼もまた、 絵画の中へ閉じ込められていた存在のようです。
前田によると、 この空間から脱出するためには、 まだ解明できていない“いくつかの謎”が存在しているとのこと。
その謎を正確に解き明かすことこそが、 この時点における、あなたたちの最大の目的となります。
ここで、あなたたちへ 『芸術品のルール』が提示されます。

前田によると、資料内に記載されている『×』が何を意味しているのかが分からないとのことでした。
これまで判明してきた“芸術品の特徴”を踏まえ、 あなたたちはある仮説に辿り着きます。
――もしかすると、『扉』そのものが芸術品なのではないか。
そう考え、扉へ近づいて調べてみると……。

そこには、芸術品に必ず存在していた“サイン”が刻まれていました。
さらに、床のマットを取り除くと、 タイトルキャプションまでもが発見されます。
どうやら、扉そのものである芸術品のタイトルが『×』らしいです。 未定義言語のため、どうにか日本語に直しておきたいところです……。
そこで再び、『芸術品名特定シート』を使用します。
その結果、この作品のタイトルが 『扉』 であることが判明しました。
非常にシンプルな名前ですが、 だからこそ、あなたたちは確信します。
――『×』が示していたものは、“扉”だったのです。
境界修復機関のデータベースへアクセスすると、 ヌル・アーデンの芸術品『扉』についての情報が開示されます。


どうやら、この作品こそが 一連の事件の根源であるようでした。
そして、脱出するためには、 ヌル・アーデンへ“何か”を渡さなければならないことも分かります。
しかし――。
ここまで解読してきた未定義言語の内容と、 どうしても情報が一致しません。
なぜ、噛み合わないのか。
そこで、あなたたちは ある“発想の転換”を迫られることになります。
「未定義言語が、1文字=1単語であることは間違いない。 だが、なぜ“左から読む”前提で解読していたのだろうか?」
例えば、
『▲▫️』 という未定義言語が、 『高い絵画』 という日本語に対応していたとします。
これまでのあなたたちは無意識に、 ▲=高い ▫️=絵画
と解釈していました。
しかし、もし未定義言語が“右から読む言語”だった場合――
▲=絵画 ▫️=高い
と解釈することもできるのです。
実際、ライトを発見した際の情報を この法則で読み直してみると、
『藍の裏側』
ではなく、
『青の下』
という意味になります。
そして実際に、 ライトは“青の裏側”という絵画の“下”に置かれていました。
つまり―― これまでの解読は、途中まで正しく、途中から誤っていたのです。
この新たな法則で、 すべての未定義言語を読み直していくと、 ついに脱出条件が明らかになります。
① 作者の“大切なもの”を、森屋へ手渡すこと ② その“大切なもの”とは、『黄色の絵の具』であること
ようやく真実へ辿り着いたあなたたち。
前田と共に喜びを分かち合った、その瞬間――
突如として、森屋が再び姿を現します。 どうやら、残された時間はあと僅かしかないようです。
そして、前田によると 『森屋』こそが『ヌル・アーデン』のようです。

しかし、 “黄色の絵の具”は現実空間のどこにも存在していません。
そこであなたたちは、 前田が絵画の中から脱出する際に使用していた 『越境ブレスレット』の存在を思い出します。

このアイテムを使用すれば、 “絵画の中に存在する物体”を持ったまま現実へ戻ることができる。
そう気づいたあなたたちは、 急いで館内の絵画を探し回ります。
ですが―― どこにも黄色の絵の具は見当たりません。
絵の具が描かれている絵画は存在する。 しかし、肝心の“黄色”だけが存在しないのです。

ここで、最後の閃きが必要となります。
その絵をよく観察すると、 黄色は“別の色に重ねられることで見えなくなっている”のではないか。
三原色の性質などを調べていくと、 その仮説は正しいことが分かります。

あなたたちは、 ついに“黄色の絵の具”へ辿り着くのです。
制限時間が切れ、あなたたちは絵の中に取り込まれ、絵の中から絵の具を持ってくることに成功します。
そのまま森屋に絵の具を手渡すと、 森屋――“ヌル・アーデン”自身による独白が語られます。
なお、その内容については、 実際に体験された方のみの記憶として、 ここでの記載は控えさせていただきます。
何はともあれ、 こうしてあなたたちは無事に脱出条件を満たし、 再び日常へと帰還することになります。
ヌル・アーデンが遺した絵画たちは、 まるで最初から存在しなかったかのように、 静かに消え去っていったのでした。


最後に ヌル・アーデン展 運営より
デジタルがますます発展し、人の手を介さずとも高い完成度のものを生み出せる時代になっていく中で、それでも私は、アナログの力を信じたいと思っています。 人の手から生まれたものには、計算では捉えきれない、人間が言語化できる以上の何かが確かに存在している。人間はそれを感じ取ることができる。 その価値を信じることこそが、デジタルと人間が競い合うのではなく、それぞれの役割を持って共存していく道なのだと思っています。
私がこれまで身を置いてきた美術と演劇の世界には、間違いなく「生」の魅力がありました。それらが体験型コンテンツという同じく「生」であることに価値のあるフィールドで交わった時、どんな体験を生み出せるのか。今、私はその可能性に最も期待しています。 ここを起点として、「体験する美術館」と聞いて皆様が期待されるものを、そして期待を超えるものを創っていけるよう、これからも挑戦を続けていきます。 今後とも見守っていただけたら幸いです。
本企画は謎解きを絡めましたが、謎解きに慣れている方からすると『簡単すぎる』 そうでない方からすると『難しすぎる』というご感想を多くいただきました。 次回以降は、より物語体験に舵を切った展開にさせていただくと思います。 長い目でよろしくお願いいたします。
記事構成・文章>かるら
文章監修>荒巻まりの
演者様紹介




【その他クレジット】
制作協力・動画ディレクション:HIGE
